~早慶戦100周年~ 修正力見せ、猛虎打破!

ラグビー男子

 晴れの特異日と謳われる11月23日。『100周年』を祝う空模様は、皮肉にもあいにくの雨となった。早慶戦は、プライドをかけた伝統の一戦であり、関東大学対抗戦を上位で終えるために絶対に負けられない一戦。試合は序盤、慶大ペースで試合が進められた。なかなか自陣から抜け出せず、0ー10と無得点のまま試合を折り返した。だが後半は一転、前半に出た課題をうまく修正し、早大はセットプレーを起点にトライを挙げる。試合をひっくり返すと19ー13で、『100周年』の節目に白星を付けた。

 前半は思うように攻撃を展開できなかった。ハイパントキックでエリアを拡大する慶大に押され、自陣でプレーする時間が続く。また、悪天候ということもあり、簡単なミスが多発した。さらに慶大の強みであるブレイクダウンで圧力をかけられ、ボールを奪取される場面も。前半13分、自陣深くのモールで反則を誘われると、慶大がショットで先制点を挙げる。さらに28分、中楠一期(慶大)がハイパントキックからチャンスを作ると、自ら守備の隙を突き、トライを演出した。だが34分、相手の反則からSH宮尾昌典(スポ2=京都成章)が速攻で敵の間をすり抜け、ゴール前までビッグゲイン。早大が反撃の狼煙を上げた、と思われたが惜しくも得点にはつなげられず。前半を0ー10で終えた。

ビッグゲインするSH宮尾

 後半は、ブレイクダウンとキックへの意識を変えて挑んだ。序盤に相手が反則を重ねたことで、早大に流れが傾く。CTB吉村紘(スポ4=東福岡)のペナルティーキックで確実にエリアを拡大していくと、敵陣5メートルライン付近でのラインアウトを獲得。そのままモールで押し込み、フッカー佐藤健次(スポ2神奈川・桐蔭学園)がインゴールをこじ開けた。待望の得点にどよめくスタンド。その直後には再び敵陣深くでのラインアウトモールから、佐藤が持ち出しトライ。またBK陣の展開から、FB小泉怜史(文構4=東京・早実)がスペースを突いた好キックを見せ、敵陣深くまで迫るなど何度もチャンスを作り、流れを引き寄せた。だが得点にまでは結び付かず、試合はしばらく膠着(こうちゃく)状態となる。12-10の僅差の中、告げられたロスタイムは5分。慶大が逆襲するか、早大が逃げ切るか、どちらが勝ってもおかしくない展開に。その40分、ゴール前で慶大がノックオン。このスクラムからNO・8村田陣悟(スポ3=京都成章)が激しく前進し、インゴールへ。最終局面で慶大にPGを献上したものの、19ー13で勝利を決めた。

力強いボールキャリーを見せたロック前田

 前半こそはハイパントキックを多用し、ブレイクダウンでの攻防で激しい圧力をかける慶大に苦しめられたものの、後半に入ってからは修正しリズムを取り戻すことができた。また帝京大に大敗してから『コネクション』をテーマに鍛錬を続けてきた成果が、全員で喜ぶ「雰囲気」の良さににじみ出ていた。さらに「モールでトライまで持っていけたのが良かった」(佐藤)。積み重ねてきたセットプレーで手応えを感じられたという点で、選手たちにとっても大きな自信となっただろう。約10日後に控える、対抗戦最終節・早明戦。この先に待ち受ける「日本一への挑戦」に向け、重要な一戦であることは間違いない。今日の勝利を追い風にし、因縁の対決を制することはできるか。

(記事 山田彩愛、写真 冷水睦実)

コメント ※記者会見より抜粋

大田尾竜彦監督(平16人卒=佐賀工)

――試合を振り返っていかがですか

 早慶戦は厳しい試合になると思っていましたし、実際その通りになりました。前半はゼロで折り返しましたが、逆転できると思っていた中で、選手たちも集中していたので、そこは後半に向けて修正できたのが良かったです。

――前半を振り返ってどのように感じていますか

 ブレイクダウンのところと、マインドの部分で仕掛けられたビックゲームに対して前半はよく耐えたと思います。ですが、マインドとしてもっとアグレッシブになってもいいのではないかと思っていました。こういうキックというところを変えればそこは上手くいくと思っていたので、その二つを修正できて良かったです。

――100周年の早慶戦、どのような気持ちでしたか

 100周年というのはなかなかない事だと感じています。先週帝京大が優勝を決めました。しかし、やはり早稲田としては早慶戦がすごくありがたいもので、順位決定戦、選手権は決まっている中で消化試合とまでは行かないですが、ターゲットとしてすごく難しくなると思います。ここで伝統の一戦、早慶戦という残るものがありますし、ライバルというのはすごくありがたいと感じていました。100周年ということで、感謝ということを強く感じていました。

――本日の天候についてはどう感じていますか

 両大学の学生に経験してもらいたいのは、満員の秩父宮でラグビーをし、これまでお世話になった方やラクビーが好きな方に応援される空間で伝統の一戦をやってほしいので、雨は少し残念でした。

吉村紘副将(スポ4=東福岡)

――試合を振り返ってください

 1試合通じて相手のハイパントやロングキックに苦しめられた時間がすごく長かったです。自陣のプレーも多くてプレッシャーも感じてミスも増えていました。ハーフタイムで監督から声をかけてもらい、チームとしてひとつの方向を向けたというのはブレイクダウンのエリアのところ、戦う気持ちをもう1回チャレンジャーとして戦おうとあったので、もう一回相手に向けてプレッシャーをかけることが出来たと感じています。

――後半に変えたキックについていかがですか

 前半慶應さんの中楠くん(中楠一期、慶大)のキックスキルが高いということで、風もありプレッシャーを受けていたのですが、後半はキックの種類、相手が後ろに引いて前を向いてキャッチできるようにしていました。隙間にハイパントを落とすであったり、浅いボールであればアグレッシブにカウンターを仕掛けていくというところはハーフタイムに言われたことでした。また、BKでも話していたことなので、そこは上手くプレーすることができて、前半とは違い敵陣にいる時間を多くできたのではないかと思います。

――かなり試合開始の直後からグラウンドが暗く、後半もライトも点灯しない中キックゲームとなりました。プレー的に影響はありましたか

  それについては正直感じなかったです。点灯していただいていたら嬉しかったですが、気にならないくらい集中していたので、あまり影響はなかったです。

――BKリーダーとして声を出して盛り上げることにどう考えてますか

 帝京大戦以降4年生のリーダーとしてやることは、低学年の佐藤(健次)を中心に声を出す選手はチームとしてありがたいです。帝京大戦が終わってから『コネクション』をテーマにプレー中のつながりや、きつい状況でもしっかり人の目を見て話を聞くことといった基本の再認識、チームとしてのまとまりを意識して慶大戦まで来ました。前半、10─0で負けていても崩れないチームになってきているのは、すごくいいことだと感じています。

――早慶戦、秩父宮でプレーした感想をお願いします

 僕も集中をしていたのですが、雨でもこんなに入るんだという。僕も小さい頃から憧れていた舞台だったので、大勢の観客の前でプレーできたのはすごく幸せでした。

フッカー佐藤健次(スポ2=神奈川・桐蔭学園)

――試合を振り返ってください

 今日の試合は、前半慶応大学の激しいブレイクダウンに苦しめられ、自分たちがアタックしていきたいところを何本もターンオーバーされてしまいました。そこを後半に修正できたその修正力は、今後にもつながると思います。去年はやはり後半慶応さんにモールで巻き返されたのですが、今日は自分たちがいいモールを組めてトライまで持っていけたのでそこは良かったと感じています。

――この前の帝京大戦を振り返って何を意識して臨まれましたか

 帝京大戦で良くない負け方をしてしまい、その試合が終わってからの約2週間は、練習中の雰囲気作りにこだわっていました。練習中に声を1番出してましたし、一人で出すのではなくて周りを巻き込んで雰囲気を作っていくというのをフォーカスしていました。それは今日のアップでも僕自身はできたと思っていて、試合中も声がけを意識しました。スキル的なところというよりチームの柱と意識し、まとめるでは無いですが、チーム全体のレベルアップを考えてやっていました。

――声がけを一番意識したのはなぜですか

 何が今1番チームに足りないかというところで、昌彦さん(相良昌彦主将、社4=東京・早実)や紘さん(吉村)、岡﨑颯馬(スポ3=長崎北陽台)という人たちが喋れているチームで、この3人が上手くいったら乗るのは上手いチームなのですが、この人たちがしんどくなってしまった時にチームも沈んでしまうというところがありました。練習中から僕だけでなく全員でそういう雰囲気を作ることが、『荒ぶる』を取るのに近づけるチームになると思ったので、声かけを意識しました。

――FWとして後半ブレイクダウンを前向きに行けるとおっしゃっていましたが、どのあたりが一番良くなったと感じていますか

 ブレイクダウンのスピードであったり一つ一つの接点の強さは改善できました。前半は相手の方が密集に早く入ってジャッカルなどもありました。しかし後半、僕たちの方が早く寄ると慶應さんもかけてこないで自分たちの展開ラグビーが出来たので、その集団の速さであったり、ジャッカルに入られた時のインパクトの強さがハマったと感じています。

――今年から本格的にフッカーとしてプレーするようになり、ご自身としてどの辺に手応えを感じていますか

 まず体重を増やしても自分的には走力的にも体のキレも1年生の頃と変わってきているのが、ほかのフッカーと差別化できているのではと感じています。僕は走れるフッカーになりたいと思っていますし、モールからのフィールドであったり、8番(NO・8)であったらあまり関われなかったプレーも多いので、そういう所は楽しんでいます。スクラムワークやラインアウトといったスキルの向上はこれから上に行くにつれてさらに必要になってくると思うので、1回今日の結果は忘れてしっかり自分の反省点を修正していけたらと思います。

――帝京大戦は、フッカーとして勉強になった試合だと思いますか、今日までの期間どう取り組んできましたか

 帝京大戦の前、大田尾監督と話す時間があり、ディフェンスやアタックが強いから、そこを伸ばしてたことをやった方がさらにスムーズに行動できるという言葉をもらいました。帝京大戦が終わってから慶大戦に向けてプレーのところでそういったところの準備を多くしました。アタックであれば、細かいステップやディフェンスであれば、むやみに寝る時間を減らすというところを、ヒントをもらいました。すると、ディフェンスをやりやすくなりましたし、アタックも少し余裕を持ってできるようになったので、監督と2人で話す時間はとても有意義なものでした。今日のプレーでも出せたと思います。

――学生として早慶戦に特別感はありましたか

チームとしての雰囲気も慶大戦前はピリピリしますし、ジュニア選手権で3タテをくらっていて、リベンジできるのは僕たちしかいないと思っていました。100周年だから、慶應だからという緊張感もありましたが、3タテされた悔しさを晴らすのは自分たちしかいないというマインドで1週間取り組んでいましたし、プレッシャーもありましたがすごく良い準備ができたと思います。

――早慶戦、秩父宮でプレーした感想をお願いします

 僕は、今日は室内の練習場から早稲田全員声が出ていたのは知っていて、本当に周りの観客や雰囲気が入ってこない環境にありました。試合中もですがアップ中から23人の雰囲気が集中しきっていたいいアップだと思っているので、あまり観客が多いことで緊張はなかったです。

 

関東大学対抗戦
早大 スコア 慶大
前半 後半 得点 前半 後半
19 10
19 合計 13
【得点】▽トライ 佐藤(2G)、村田 ▽ゴール 吉村(2G) 
※得点者は早大のみ記載
早大メンバー
背番号 名前 学部学年 出身校
井元 正大 文4 東京・早実
後半35分交代→18川﨑
佐藤 健次 スポ2 神奈川・桐蔭学園
亀山 昇太郎 スポ2 茨城・茗渓学園
後半36分交代→17山口
前田 知暉 社4 東海大大阪仰星
後半42分交代→19藤井
池本 大喜 文構3 東京・早実
栗田 文介 スポ1 愛知・千種
◎相良 昌彦 社4 東京・早実
後半32分交代→20永嶋
村田 陣悟 スポ3 京都成章
宮尾 昌典 スポ2 京都成章< /td>
後半42分交代→21小西
10 野中 健吾 スポ1 東海大大阪仰星
11 松下 怜央 スポ4 神奈川・関東学院六浦
12 吉村 紘 スポ4 東福岡
13 岡﨑 颯馬 スポ3 長崎北陽台
14 槇 瑛人 スポ4 東京・国学院久我山
15 小泉 怜史 文構4 東京・早実
リザーブ
16 安恒 直人 スポ2 福岡
17 山口 湧太郎 スポ1 神奈川・桐蔭学園
18 川﨑 太雅 スポ3 東福岡
19 藤井 将吾 スポ3 大阪・早稲田摂陵
20 永嶋 仁 社3 東福岡
21 小西 泰聖 スポ4 神奈川・桐蔭学園
22 久富 連太郎 政経3 島根・石見智翠館
23 磯崎 錬太郎 商3 徳島・城東
※◎はゲームキャプテン、監督は大田尾竜彦(平16人卒=佐賀工)